脱色アスファルト混合物に関する品質管理
大成ロテック株式会社 青海合材工場
係長
守屋 貴夫○Takao Moriya |
係長
伊藤 大輔Daisuke Itou |
課長代理
市嶋 貴雄Takao Ichijima |
1.はじめに
公園の舗装や景観に配慮した外構工事などで、脱色アスファルト舗装が採用されていることがよくある。脱色アスファルト舗装とは、一般的に天然砂利と脱色アスファルトを混合した加熱アスファルト舗装で、骨材の色が舗装面に現れるため自然な風合いのある舗装である。このため、通常の黒いアスファルト舗装と同じように施工することが可能である反面、製造や施工において色合いを損なわないように、通常のアスファルト舗装以上に留意すべき事項がある。
このようなことから、本文は、合材工場の品質管理担当者の観点から、脱色アスファルト舗装について、混合物製造および施工上の問題点とその対策について示す。
脱色アスファルト舗装に使用する混合物(以下脱色アスファルト混合物と称する)は、骨材と脱色アスファルトで構成されている。骨材は一般的に瀬戸砂利や猿投砂利、石灰石など色の鮮やかな骨材を用いる。図−1、2に瀬戸砂利および猿投砂利の例を示す。
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図-1 瀬戸砂利 |
図-2 猿投砂利 |
また、脱色アスファルトは透明性の高い石油樹脂系結合材で、アスファルトメーカーが重交通対応や軽交通用対応など、適用別にそれぞれ数種類のラインナップを揃えている。
2.現場における問題点
(1) 製造・出荷に関して
当社青海合材工場での脱色アスファルト混合物の配合例を表−1に示す。
表-1 脱色アスファルト混合物の配合例 |
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一般的に、合材工場では通常の黒いアスファルト混合物を製造しているため、ミキサ内は黒い汚れが付着している。このような状態で脱色アスファルト混合物を製造すると、黒ずみが生じ本来の色合いを損なってしまう。
また、ベルトコンベア,ドライヤ,スクリーンやホットビンなどのプラント設備にも、通常の骨材や微粒分が付着していることがあり、これらが黒ずみの原因になることもある。
(2) 施工に関して
通常のアスファルトフィニッシャには、アスファルト(黒い汚れ)が付着している。このような状態で脱色アスファルト混合物の舗設を行うと、図−3に示すように、舗設面に汚れが生じることがある。次に、図−4は、アスファルトフィニッシャに付着していたアスファルト混合物が施工中に加熱され軟化して剥がれ、脱色アスファルト混合物に混入した例である。
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図-3 敷均し面センターの汚れ |
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図-4 加熱され剥がれた合材による汚れ |
また、舗設時の付着防止剤として、一般的に軽油を使用するが、脱色アスファルト混合物では、舗設表面に軽油が付着すると、部分的に脱色アスファルトが剥離(カットバック)し、色合いを損なう恐れがある。
(3) 色合いの変化
脱色アスファルト混合物は、熱履歴により色むらが生じやすい混合物である。この色むらは、紫外線による劣化や、人や車両の通行により骨材面のアスファルト被膜が剥がれ、骨材面が露出し、自然石本来の色が現れることなどにより、供用後の時間経過とともに軽減する。
しかしながら、施工直後の色むらについて客先から指摘されることが多々ある。このような指摘を回避するためにも客先に対し、事前に脱色アスファルト混合物の供用後の色合いの変化を説明しておくことが重要である。
3.対応策と適用結果
(1) 製造・出荷に関して
脱色アスファルト混合物を出荷する際は、ミキサ,ベルトコンベアやドライヤなど、プラント設備の汚れを取り除くために、使用する天然砂利で捨てバッチを行う。
捨てバッチ毎の混合物の色の変化例を図−5に示す。写真から、捨てバッチを7回以上行うと、混合物の色合いの変化はなくなり、均一な色合いを呈した混合物が出荷できるといえる。
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図-5 捨てバッチによる混合物の色の変化 |
ここで、一日の施工数量、施工速度、施工方法などの施工条件により、脱色アスファルト混合物の出荷サイクルが変わる。出荷サイクル(連続出荷)を分割すると、そのたびに捨てバッチを行う必要がある。これにより、材料のロスが増加しコストアップにつながることになるので、事前に現場サイドと出荷サイクルに対して入念に打合せを行うことが重要である。
また、運搬用のダンプトラックについても、プント設備と同様、清掃を行う。ダンプトラックの清掃は、荷台だけではなくバンパーフレームの裏や、あおりのキャッチ部分なども念入りに清掃することが重要である。
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図-6 ダンプトラック荷台の清掃 |
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図-7 バンパーフレームの汚れ |
(2) 施工に関して
アスファルトフィニッシャは、バーフィーダのセンター仕切りとバーフィーダーチェーンの隙間、アジャスタの足場の隙間、スクリュウやアイロン伸縮部分の隠れている部分も、全張り出しして念入りに清掃する。特に、アスファルトは温度が上がることにより取れやすくなるので、加熱しながらの作業が必要である。
また、植物系などの付着防止剤であっても多量に使用すると、骨材表面のアスファルト分がカットバックし、色むらが生じることがあるので、使用量や希釈率などに留意が必要である。
(3) 色合いの変化
脱色アスファルトの熱による影響と、脱色アスファルト混合物の供用後の色(明るさ)の変化について実験を行い検証した。
@脱色アスファルト単体
脱色アスファルト単体(メーカーの違う3種類)の保温時間による色の変化を検証した。これは、ローリーやアスファルトタンクでの保温貯蔵を想定し、これが色合いに及ぼす影響を確認するためである。色合いの評価は、色彩色差計による明度で行った。
明度の変化を図−8に示す。ここで、明度が小さいほど黒っぽい色合いであることを示している。
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図-8 脱色アスファルト単体の保温による明度の変化 |
図より、脱色アスファルトの種類に関わらず、保温7時間までの明度の変化は±2.5程度であり、7時間程度の保温であれば脱色アスファルト単体に変色は生じないものと判断できる。
A脱色アスファルト混合物
脱色アスファルト混合物においても、混合直後に作成した供試体と最適混合温度で7時間保温した供試体について、屋外暴露させた場合の明度の変化を検証した。混合物の保温はサイロ出荷や運搬、現場での待機を想定したものである。
経過日数と明度の関係を図−9(保温なし)および、図−10(7時間保温)に示す。
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図-9 保温時間なし供試体の明度の変化 |
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図-10 7時間保温供試体の明度の変化 |
脱色アスファルト混合物は、経過日数とともに紫外線劣化等により白っぽくなることがわかる。
また、7時間保温した混合物では、保温なしの混合物と比べて、初期の明度が低いことがわかる。このことは、通常出荷(保温なし)とサイロ出荷(保温有り)を併用すると、舗装に色むらが生じる可能性があることを示している。なお、長時間ダンプを待機させることでも色むらを生じさせる原因になると推察される。
次に、暴露2年経過後の供試体の状況を図−11に示す。なお、供用に伴う表面の摩耗を想定して、作製直後にデッキブラシで表面を削った供試体についても併せて示している。
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図-11 2年経過後の色の変化 |
図−11から、2年経過した供試体は、舗設直後の供試体に比べて白っぽくなっている。また、表面を削っていないものは、水の影響を受けてさらに白っぽくなっている様子が伺える。
供用後の脱色アスファルト舗装は、人や車両の通行により表面の脱色アスファルト被膜が剥がれ、自然石本来の色合いを呈するようになる。しかし、人や車両の通行がなかったり、部分的に通行しない箇所については白っぽく変色した面が残り、色むらとの指摘の原因となる。このようなことが想定される場合は、事前に客先にこのような現象を説明するとともに、施工直後にデッキブラシなどで表面を擦るなどの対応が必要である。
4.おわりに
脱色アスファルト舗装について、景観性を向上させるための混合物製造および施工上の対策を取りまとめると、次の通りである。
@脱色アスファルト舗装は、通常のアスファルト舗装と同様の施工が可能であるが、舗設現場やプラントでの事前準備が重要である。
A脱色アスファルト混合物出荷の際は、ミキサやプラントなどの設備を十分に清掃する。
B脱色アスファルト混合物出荷の際は、事前の打ち合わせを十分に行い、出荷量、出荷サイクルなど、現場と合材工場の連絡を密にする必要がある。なお、製造に伴う色むらを抑制するために連続的な出荷が望ましい。
Cアスファルトフィニッシャやダンプトラックの清掃を細部まで入念に行う。
D発注者には、事前に供用による色の変化を説明し、舗設直後や供用後の表面性状のイメージを共有するようにする。
これら対策を確実に行い、景観舗装として脱色アスファルト舗装(弊社技術名:TNC自然色舗装)をさらに普及させていきたいと考えている。